安全衛生委員会の役割:以下の安全衛生活動について、各職場の具体的な取り組み課題を安全衛生委員会で計画し、その具体的な労働安全衛生活動を出来ることから実施し、継続して行うことが重要である。

1. 労働安全衛生関係法令の遵守をチェックする: 労働安全衛生関係法令の中心的法律は労働安全衛生法である。安全衛生委員会の設置は、労働安全衛生法に定められている。総括安全衛生管理者、産業医、衛生管理者、作業主任者などの安全衛生管理体制の主な規定もこの法律で定められている。しかし、安全衛生委員会を設置していない職場、産業医を選任していない職場が依然として多数ある。

2.       参加型労安活動: 労働者や労働組合が安全衛生活動、職場改善に積極的に参加してゆくことで、ILOの労働安全衛生マネジメントシステムに関するガイドラインの中で労働者の参加が強調されている。参加型の活動は問題解決型、自主対応型とも言われる。

3.       安全衛生委員会は、安全衛生活動の基本: 安全衛生委員会は設置しているが、開催されていないことや、開催しても議題がないと言った状況があることも事実である。安全衛生委員会は、月1回以上開催する。労使対等の原則で運営できる。多数決での決定ではなく、合意形成が基本である。労働時間内に活動できることとなっている。年間計画を作成し、運営予算をつけることが必要である。調査、研修会、安全衛生教材購入、先進職場視察と交流などの活動も活発におこなうことも必要である。

4.       職場点検・巡視: 安全衛生委員会の企画する最大の活動である。職場点検・巡視なくして職場改善はありえない。作業場を観察し、作業者の訴えを聞き、作業者の意見を聞くことによってはじめて問題点をつかむことができる。職場点検・巡視の方法としては、グループワークの活用、チェックリストの作成と活用、作業マニュアルの作成、経験の交流などが有効である。安全衛生委員会で話すことがないといったこともよく聞く。職場巡回をすれば、いくらでも課題は出てくる。職場の安全衛生課題が増えることで仕事が増えるという訴えもよく聞く。しかし、職場巡回をしていないのは、結果として安全衛生活動を放棄しているのと同じである。組合の担当者に安全衛生の仕事が集中することを改善するためには、多くの組合員が参加できる安全健康サークルなどを安全衛生委員会のもとに組織して活動力を上げていくことが必要であろう。

5.       安全対策: 職場改善の基本である。安全なくして労働なしと言われるように、職場点検・巡視の第一目標が安全対策にある。特に、公共サービスの民間委託化が拡大する中、委託先企業に働く労働者の安全対策が不充分な事が多い。

6. 環境改善: 職場における物理的有害要因、化学的有害要因、生物的有害要因の改善を行うことである。物理的要因としては、温熱条件、騒音、振動、電磁波、放射線、紫外線・赤外線、レーザー光線などがある。化学的要因としては、ダイオキシン、ガス、有機溶剤、重金属、粉じん。酸素欠乏、皮膚障害、アレルギー、職業ガンなどがある。生物学的要因としては、結核、MRSAO157などの細菌、C型肝炎などのウイルス、寄生虫、アレルギー、花粉症などがある。これら、有害・危険要因の侵入経路は、吸入、皮膚接触、経口摂取である。作業環境対策の方法としては、危険、有害作業の抑制、廃止、拡散・伝搬の防止、個人的防護などがある。

7. 作業改善: 作業編成、作業時間(総作業時間、連続作業時間)、人間工学的対策についての改善を行うことである。VDT作業基準遵守も必要である。更に、情報技術の進展の一方で職場のストレスと労働密度が増大している。

8. 健康増進: 産業医の職場巡回を行い、健康相談、健康診断の充実を行うことである。安全衛生委員会の議題が健康診断の項目に終始する事が多いが、健康診断後の事後処置、生活指導の充実も重要な課題である。

9. メンタルヘルス対策: 緊急対策の必要な課題である。自殺や長期病休者は、心の不調が原因であることが多い。メンタルヘルスへの対応としては、3段の予防策を実施する必要がある。1次予防は、職場を快適にする活動である。安全衛生活動の活性化は、職場改善を中心に労働者が積極的に参加することで実現できる。2次予防はメンタル的に不調になりかけた人や、なった人への早期対策、早期治療である。3次予防は、職場への円滑な復帰とフォローである。特に、相談やカウンセリングをうけやすい相談体制をどのように整えるかが非常に重要となっている。身体が風邪をひくのと同様に人間は「心の風邪」もひくとよく言われる。働き過ぎなどストレスがたまりやすい時代であるから誰もが精神的不調を抱える要因を持っている。業務量の増加、業務内容の高度化、職場の人間関係、人員削減、適性、賃金などがストレス要因として上がっている。こういった状況の中で、もっとも緊急の課題は、早くカウンセリングを行い、早期治療につなげる体制づくりであろう。不調の人からはいろんなサインが出されている可能性があるはずなのに、それに対するカウンセリング体制がないために「こじれる」という状態になってしまっている。利用しやすい相談窓口の設置が今、求められている。